- 吐き気・嘔吐について
- 吐き気・嘔吐を引き起こす原因
- 吐いたものの処理に関する注意点
- 吐き気・嘔吐の原因となる主な疾患
- 吐き気・嘔吐の検査・診断方法
- 吐き気・嘔吐が続く場合は早めに当院までご相談ください
吐き気・嘔吐について
嘔吐とは、胃の内容物が勢いよく口から排出される状態を指し、吐き気は「吐いてしまいそうな気持ち悪さ」を伴う状態のことを言います。医学的には、吐き気は「悪心（おしん）」と呼ばれます。
嘔吐は、のどに異物が詰まったり、体内に入った有害なものを排除しようとする生理的な防御反応として現れることもありますが、病気が原因で起こる場合もあります。
例えば、お酒を飲みすぎた翌日のように明確な原因がある場合を除き、吐き気や嘔吐が続くようであれば、消化器内科で原因を調べることが大切です。
早急な受診が必要な吐き気・嘔吐
- 嘔吐と同時に強い腹痛がある
- 吐き気や嘔吐に加え、めまいやふらつき、手足の麻痺がある
- 吐いたものに血液が混ざっている
- 嘔吐が繰り返され、水分が全く摂れない
なるべく早く受診した方が良い吐き気・嘔吐
- 吐き気や嘔吐に加えて、発熱や下痢がある
- 数日間にわたって吐き気や嘔吐が続いている
- 一度治まったように見えても、再び繰り返す場合
経過観察で様子を見ても問題ない吐き気・嘔吐
- 安静にしていたら吐き気や嘔吐がすぐに治まり、その後も再発しない
- 暴飲暴食など、原因が明確で一時的なものと考えられる場合
吐き気や嘔吐は、市販薬で改善することもありますが、自己判断で済ませてしまうと、背後にある病気の発見が遅れてしまう可能性があります。特に、症状が繰り返されるようであれば、単なる胃腸の不調ではないこともあるため、早めに医師の診察を受けておくと安心です。
吐き気・嘔吐を引き起こす原因
嘔吐は、脳幹にある「嘔吐中枢」が様々な刺激を受け取ることで引き起こされます。例えば、のどの奥に物が引っかかった場合や、食べ過ぎによる胃の圧迫、アルコールの過剰摂取による化学的刺激、または細菌感染などが原因で嘔吐中枢が反応し、吐き気や嘔吐が発生します。
ただし、こうした明らかな原因が見当たらないにもかかわらず、吐き気や嘔吐が続く場合には注意が必要です。
脳や心臓の病気といった命にかかわる疾患が嘔吐中枢を刺激している可能性もあります。
症状に異常を感じた際は、自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。
吐いたものの処理に関する注意点
嘔吐は、ウイルス性胃腸炎や食中毒といった感染症が原因で起こることも多くあります。嘔吐物の中には、細菌やウイルスなどの感染性病原体が含まれている可能性があるため、処理の際には十分な注意が必要です。
以下の点に留意し、安全に対応しましょう。
- 処理時には使い捨てのポリ手袋とマスクを必ず着用する
- 吐瀉物はポリ袋に入れてしっかり密閉し廃棄する
- 吐瀉物が付着した場所は、家庭用漂白剤などで丁寧に消毒する
- 処理中に着ていた衣類は他の洗濯物と分けて洗濯する
- 最後に石けんと流水でしっかりと手洗いを行う
感染の拡大を防ぐためにも、正しい手順で対応することが大切です。
吐き気・嘔吐の原因となる主な疾患
急性胃腸炎
細菌やウイルスによる感染によって、突然症状が現れるのが急性胃腸炎です。原因となる病原体には、ノロウイルスやロタウイルス、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌、病原性大腸菌（O-157など）があります。
特にノロウイルスやO-157は激しい嘔吐や下痢を引き起こすことが多く、脱水症状に注意が必要です。
幼児や高齢者などは脱水のリスクが高いため、水分が十分に摂れない場合は入院による治療が必要となることもあります。
また、海外渡航後に症状が生じた場合は、感染症の可能性も考えられるため、医師に帰国の事実を必ず伝えましょう。
腸閉塞
手術後の癒着や腫瘍などが原因で腸が塞がれ、内容物やガスが通れなくなる状態です。吐き気や嘔吐、腹部膨満感などが主な症状で、重症化すると命に関わる可能性もあるため、速やかな受診が必要です。
急性虫垂炎
初期にはみぞおち付近に痛みを感じ、吐き気や食欲不振を伴うことがあります。
時間の経過とともに痛みが右下腹部へ移動するのが特徴です。軽症の場合は抗菌薬での治療も可能ですが、重症化すると腹膜炎を起こし、開腹手術が必要になることもあります。
急性胆のう炎・胆石
胆のうに炎症が起きたり、胆石が詰まることで右上腹部の痛みや吐き気・嘔吐が生じます。
心臓・脳・眼の重篤な疾患
吐き気や嘔吐が、以下のような命にかかわる病気の一症状として現れることもあります。
- 心筋梗塞・狭心症：胸部やみぞおちに強い痛みを伴うことが多いです。
- 脳梗塞・脳出血・脳炎・髄膜炎：片麻痺、言語障害、激しい頭痛などを伴う場合があります。
- 急性緑内障発作：急激な眼圧上昇によって起こり、吐き気や頭痛、視覚異常などが生じます。症状が脳疾患と類似するため、早期の眼科的鑑別が重要です。
いずれも迅速な医療介入が必要な病気ですので、少しでも疑わしい症状があれば、躊躇わずに救急受診を検討してください。
胃がん
初期の段階ではほとんど症状が現れないこともありますが、進行すると胃の痛みや吐き気・嘔吐が出てくる場合があります。特に症状が長引くときには、早めの検査・診察が重要です。
胃・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が炎症により深く傷ついた状態です。胃痛や吐き気、嘔吐が見られることがあり、進行すると吐血や黒色便（タール便）が出ることもあります。さらに悪化すると穿孔を起こし、緊急手術が必要になることもありますので、早期受診をお勧めします。
吐き気・嘔吐の検査・診断方法
まず問診にて、どのような症状がいつ、どのような状況で起こったかを詳しくお伺いします。加えて、最近の食事内容、過去の病歴、服用中のお薬などについても確認します。
そのうえで、必要に応じて以下のような検査を行い、原因となっている疾患を特定していきます。
- 血液検査：感染症の有無や、消化器や内分泌系の状態を把握するために行います。
- 胃カメラ検査：食道や胃、十二指腸など消化管の異常が疑われる場合に実施します。
- 腹部超音波検査：膵臓、胆のう、肝臓などの疾患を確認するために行います。
また、吐き気や嘔吐の症状から脳疾患や心疾患、緑内障発作などが疑われる場合は、連携先の高度医療機関をご紹介し、速やかに精密検査が受けられるよう対応いたします。
吐き気・嘔吐が続く場合は早めに当院までご相談ください
明確な原因が思い当たらないにもかかわらず、吐き気や嘔吐が何日も続く場合は注意が必要です。深刻な病気が隠れていることもあるため、できるだけ早い段階で消化器内科を受診し、原因を突き止めることが大切です。
また、嘔吐が長引くことで水分補給ができず脱水症状を引き起こすリスクもあります。少しでも危険を感じたら、躊躇わずに医療機関を受診してください。
さらに、暴飲暴食など一時的な原因がある場合でも、同じような症状を繰り返すようであれば注意が必要です。思わぬ疾患が潜んでいる可能性もあるため、一度当院までご相談ください。