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虚⾎性腸炎

虚血性腸炎について

虚血性腸炎とは、大腸に血液を送る血管の一部で血流が低下(虚血)することで、大腸の粘膜が損傷し、急激に炎症やびらんが生じる病気です。特に、大腸の左側にあたる下行結腸周辺に発症することが多いです。

虚血性腸炎の主な症状

虚血性腸炎の3大症状は、「腹痛」「下痢」「血便」です。なかでも、便器が真っ赤に染まるような血便に驚いて救急車を呼ばれる方も少なくありません。なお、多くのケースでは安静にすることで自然に回復します。
ただし、重症化した場合には、腸管の狭窄を引き起こすこともあるため、早めの受診と正確な診断が重要です。

虚血性腸炎と似た症状を示す疾患

虚血性腸炎に見られる腹痛・下痢・血便は、他の消化管疾患にも共通する症状です。そのため、確定診断には大腸カメラ検査が欠かせません。
ただし、虚血によって腸の粘膜が非常に脆弱になっている場合もあるため、検査は慎重に行う必要があります。

大腸がん

初期には自覚症状がほとんどありませんが、S状結腸や直腸といった硬い便が通過する部位に発生すると、比較的早期に血便として現れることがあります。進行すると腹痛や下痢なども見られます。確定診断には大腸カメラが必須です。

クローン病

消化管全体に炎症を起こす国の指定難病で、口から肛門までのどこにでも病変が生じます。
特に小腸と大腸の接合部に好発し、腹痛、下痢、血便などを繰り返します。大腸に病変がある場合は、大腸カメラ検査による評価が必要です。

クローン病

潰瘍性大腸炎

直腸から始まり、大腸全体にわたって連続的に炎症やびらんが広がる慢性の炎症性腸疾患で、クローン病とともに国の難病に指定されています。主な症状は腹痛、下痢、血便で、再燃と寛解を繰り返すのが特徴です。

潰瘍性大腸炎

大腸憩室炎

大腸の壁の一部が外側へ膨らんで袋状になる「憩室」に便が詰まり、炎症を起こすことで発症します。炎症による腹痛や下痢に加え、憩室に隣接する血管が破れると大量出血を伴うこともあります。腸壁が非常に薄くなっているため、症状が激しくなる場合もあります。

虚血性腸炎を引き起こす原因

虚血性腸炎は、大腸の一部で血流が不足することによって粘膜が障害され、炎症やびらんが引き起こされる疾患です。発症の背景には、大きく分けて「血管に関わる因子」と「大腸側の要因」があります。
血管由来の原因としては、動脈硬化による血流の低下が代表的です。
一方で、大腸側の原因としては、慢性的な便秘による腸内圧の上昇が関係していることが多く、これにより一部の血流が遮断されやすくなります。
さらに、高脂肪食への偏り、ストレス、運動不足といった生活習慣の乱れも、発症のリスクを高める要因とされています。

虚血性腸炎の検査・診断方法

まずは問診を行い、症状の出現時期や内容、経過などを詳しくお伺いします。虚血性腸炎が疑われる場合は、血液検査によって炎症や貧血の有無を確認し、その結果をもとに大腸カメラ検査を実施して、病変の状態を直接観察します。
なお、虚血性腸炎の急性期には、腸管の粘膜が非常に脆弱になっており、穿孔(腸に穴があくこと)のリスクがあるため、大腸カメラ検査は慎重に進めます。

虚血性腸炎の確定診断

突然、左下腹部や左脇腹に強い腹痛が起こり、その後排便とともに通常の便の後に血便が見られるようなケースでは、虚血性腸炎の可能性が高まります。なかには、便器が真っ赤になるほどの出血に驚いて受診される方もいらっしゃいます。
大腸カメラ検査で診断の決め手となるのは、病変が限局して存在し、周囲の組織は正常に保たれている「区域性病変」という特徴です。典型的には、粘膜の発赤、むくみ(浮腫)、びらん、潰瘍などの所見が見られます。

大腸カメラ検査

虚血性腸炎の治療方法

虚血性腸炎の多くは一過性の血流障害が原因であるため、安静にして腸への負担を避けることで自然に回復することがほとんどです。軽症であれば、入院の必要はなく、自宅での経過観察と消化にやさしい食事管理だけで数日以内に改善が期待できます。
ただし、腸管が狭窄を起こしている場合や、血流障害が進行して腸管壊死を引き起こしている場合は、外科的な手術が必要になるケースもあります。

虚血性腸炎の予後

軽症の場合は、腸への負担を軽減した生活を数日間送るだけで回復しますが、中等症や重症例では入院が必要となることがあります。
入院中は点滴で栄養補給を行いながら、腸をしっかりと休ませる治療を行います。場合によっては、手術の検討が必要になることもあります。
適切な治療方針を判断するうえで非常に重要なのが、大腸カメラによる病変の観察です。
虚血性腸炎では検査中のリスクも伴いますが、当院では内視鏡の専門医・指導医の資格を持つ医師が、患者様に負担の少ない方法で慎重かつ的確に検査を行っています。気になる症状があれば、早めにご相談ください。