胃もたれについて
胃もたれとは、食後に胃が重く感じたり、消化が進まずに停滞しているような感覚が続いたりする状態を指します。人によって「胃が張っている」「食べ物がいつまでも残っている気がする」といったように感じ方は様々です。
この症状は、食べたものが何らかの要因によってスムーズに消化されず、胃の中に長く留まることで生じる不快感を伴うもので、胃の不調の中でもよく見られる症状の1つです。
胃もたれの受診の目安
「食べ過ぎた」「お酒を飲み過ぎた」など原因が明確で、症状も一時的ですぐに改善するような場合には、過度な心配は必要ありません。
しかし、以下のような状態が続く場合には、早めに消化器内科での診察をお勧めします。
- 食事量は適切なのに、胃もたれの症状が頻繁に起こる
- 消化にやさしい食事を心がけていても、不快感が改善しない
- 胃もたれが続くなかで体重が減ってきた
- 食後の違和感が長く続くようになった
一時的な症状であっても、それを繰り返すことで胃腸に負担が蓄積し、将来的に疾患へと繋がる可能性も否定できません。
日頃から食事や飲酒はほどほどを心がけ、胃にやさしい生活習慣を意識しましょう。
胃もたれを引き起こす原因
消化器疾患以外によるもの
暴飲暴食や不規則な食生活
脂質の多い料理やタンパク質中心の偏った食事、また暴飲暴食は、消化に時間がかかるため胃に大きな負担をかけます。
さらに、毎日の食事時間が一定でない、夕食後すぐに就寝するなどの不規則な生活習慣も胃の働きを乱し、胃もたれを引き起こしやすくなります。
ストレスによる自律神経の乱れ
強いストレスや緊張によって自律神経のバランスが崩れると、胃の運動や胃液の分泌が低下します。その結果、食べ物の消化が進まず、胃の中に長く留まることで胃もたれが生じます。
ストレスは、胃の受け入れ準備や蠕動運動（小腸への送り出し）にも悪影響を及ぼします。
加齢に伴う機能低下
年齢を重ねるにつれて胃の消化機能が衰えるため、胃もたれを感じやすくなる傾向があります。
消化器疾患によるもの
食習慣や生活習慣を改善しても胃もたれの症状が続く場合には、消化器系の疾患が関係している可能性があります。症状が慢性的に続くときは、一度消化器内科での検査を受けることをお勧めします。
胃もたれの原因となる主な消化器疾患
ピロリ菌感染
ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を使ってアンモニアを産生し、胃酸を中和しながら胃粘膜に定着します。このアンモニアには毒性があり、周囲の組織に炎症を引き起こします。これが慢性胃炎へと繋がり、胃の機能低下を招くことで胃もたれを引き起こします。
機能性ディスペプシア
内視鏡などで目立った異常が見られないにもかかわらず、胃の不快な症状が持続する病気です。胃の運動機能の低下や知覚過敏などが原因とされ、胃もたれの原因になることがあります。
胃下垂・胃アトニー
胃下垂は、胃を支える筋肉が緩むことで胃の位置が本来よりも下がってしまう状態です。多くの場合、胃壁の筋力も低下しており（胃アトニー）、胃の働きが鈍くなることで胃もたれが生じやすくなります。
胃がん
初期の段階では自覚症状が乏しい胃がんですが、進行するにつれて胃の壁が硬くなったり、内腔が狭くなったりして、胃の動きが悪くなることがあります。その結果、食後の胃もたれとして症状が現れることがあります。
胃もたれの検査・診断方法
胃もたれの症状が長引く場合は、原因を明らかにするために以下のような検査を行います。
胃カメラ検査
胃や十二指腸、食道といった上部消化管に異常が疑われるときには、胃カメラによる観察が最も有効です。
胃カメラ検査では、口からスコープを挿入し、粘膜の状態を直接確認します。炎症や潰瘍、腫瘍などの異常が視認でき、必要に応じて細胞の採取も行い、病理検査で詳しく診断することが可能です。
当院では、内視鏡の専門医・指導医の資格を持ち、豊富な臨床経験を積んだ医師が検査を担当しており、患者様へのご負担をできる限り抑えた丁寧な検査を心がけています。安心してご相談ください。
お薬による経過観察
症状の程度や疑われる疾患に応じて、適切なお薬を処方し、服用しながら様子を見ることもあります。薬物療法を通して胃の状態を安定させ、経過を見ながら必要に応じて検査や治療を追加します。
胃もたれが続く場合は早めに当院までご相談ください
胃もたれが習慣のようになってくると、「いつものこと」と軽く考え、市販薬でしのいでしまう方も少なくありません。
確かに市販の胃薬で一時的に症状が緩和されることはありますが、それはあくまで表面的な対処であり、根本的な原因を治しているわけではありません。
例えば、胃がんが原因で胃もたれが起きている場合でも、市販薬で一時的に症状が落ち着くことがあります。しかし、病気そのものは進行してしまい、発見が遅れることで命に関わる結果となるケースもあります。
これは胃がんに限らず、他の病気でも同様で、放置することで症状が悪化してしまうことがあるのです。
特に、暴飲暴食といった明確な理由がないのに胃もたれが長く続くようであれば、早めに当院までご相談ください。内視鏡検査などでしっかりと原因を調べたうえで適切な治療を行います。
胃もたれの治療・予防方法
食生活・運動習慣の見直し
胃もたれが続く背景には、日常の食習慣や生活習慣に原因があることも少なくありません。そのため、まずは基本的な生活の改善を心がけましょう。
- 暴飲暴食を控える
- よく噛んでゆっくり食べる習慣をつける
- 刺激の強い食品や脂質・タンパク質に偏った食事を避ける
- 栄養バランスの取れた食事を心がける
- 1日3食を規則正しく摂る
- 夕食後すぐに寝ない
このような食事内容や食べ方の工夫が、胃の負担軽減に繋がります。
また、運動不足によって内臓の働きが低下し、胃の不調に繋がることもあります。特にデスクワーク中心の方や高齢者は要注意です。
軽く汗をかく程度の運動を週に2回以上、30分程度取り入れることが望ましく、毎日の生活の中で階段を使う、歩く時間を意識して増やすといった工夫も効果的です。
ストレスを溜め込まない工夫
強いストレスは自律神経の乱れを引き起こし、胃の働きを鈍らせる大きな要因となります。
趣味やリラックスできる時間を持つなど、自分に合ったストレス解消法を見つけ、心身のバランスを保つことが胃もたれの予防にも繋がります。
良質な睡眠の確保
十分な休息が取れない生活が続くと、疲労の蓄積により胃腸機能が低下します。
規則正しい生活リズムを意識し、適切な睡眠時間を確保することが重要です。仕事の合間にも適度に休憩を取り、疲れを溜め込まないようにしましょう。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌に感染していると、慢性胃炎を発症して胃もたれや胃の不快感を引き起こすだけでなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらに胃がんのリスクも高まります。
検査を受けていない方は、早めにピロリ菌感染の有無を調べ、陽性の場合は適切な除菌治療を受けることが大切です。