下痢について
下痢とは、水分を多く含んだ便が何度も排出される状態を指します。
これは、腸からの分泌液の増加、吸収機能の低下、蠕動運動（腸の動き）の過剰な活性化などが原因となって起こります。下痢は大きく分けて、短期間で治まる急性下痢と、4週間以上続く慢性下痢に分類されます。
原因は、冷えや暴飲暴食といった日常的な要因から、感染症やアレルギー、さらには炎症性腸疾患・大腸がんなどの重篤な疾患まで様々であり、なかには早期の診断と治療が求められるケースもあります。
下痢の受診の目安
早めの受診が必要な下痢
このような症状は、感染性胃腸炎のほか、難病指定されている潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患が関係している可能性があります。
特に難病に分類されているこれらの疾患では、放置することで症状が急速に悪化する恐れがあるため、早期の診断と治療が重要です。
また、下痢によって水分が奪われると脱水状態になりやすくなります。
水が飲めない、飲んでもすぐに吐く、下痢ですぐ排出されるなどの状況が続くと、尿の量が減ったり色が濃くなるといったサインが現れ、最終的には腎機能に悪影響を及ぼすリスクもあります。
さらに、脱水が進行すると血圧が低下し、頻脈やショック状態に陥ることもあります。特に幼児や高齢者では脱水の進行が早いため、少しでも不安な症状があれば、早めに受診してください。
日常的な原因によって起こる下痢
下痢は、暴飲暴食、唐辛子などの刺激物の過剰摂取、身体の冷えといった日常的な原因でも発生することがあります。
また、腸の動きは自律神経によって調整されているため、ストレスや不安、精神的な緊張が原因となって腸の働きが乱れ、下痢を引き起こすことも少なくありません。
このようなケースでは、便秘と下痢を交互に繰り返すといった症状が見られることもあります。
こうした下痢は、腸を安静に保ち、消化にやさしい食事を心がけるなどの対応で自然に改善することがほとんどです。
しかし、症状が長引いたり、繰り返し起こるような場合は、消化器系の病気が隠れている可能性もありますので、早めに消化器内科を受診しましょう。
下痢の原因となる主な疾患
下痢の原因は、感染症、炎症性疾患、腫瘍性病変、アレルギー反応など多岐にわたります。例えば、感染性腸炎や過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎・クローン病、大腸がん、大腸ポリープなどがその代表例です。さらに、アレルギー性胃腸炎では特定の食物に対するアレルギー反応によって下痢が生じることもあります。
感染性腸炎
カンピロバクターやサルモネラ菌、O-157といった細菌や、ノロウイルスなどのウイルスが原因となって発症します。腹痛、発熱、吐き気、嘔吐、下痢といった複数の症状が同時に現れることが多いのが特徴です。海外渡航後に発症した場合は、コレラや赤痢などの感染症も疑われます。
これらの疾患の中には強い感染力を持つものもあるため、症状が出た場合は早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるとともに、他者への感染を防ぐよう注意しましょう。
過敏性腸症候群
腸の機能に異常があるものの、明確な器質的疾患は見られない状態で、下痢型・便秘型・混合型など様々なタイプがあります。ストレスや不安などの精神的な負荷が引き金となることが多く、腹痛や便通異常を繰り返すのが特徴です。
日常生活に支障をきたしやすい疾患ではありますが、適切な治療と生活習慣の見直しによって改善が見込めます。
潰瘍性大腸炎・クローン病
いずれも慢性的に消化管に炎症を引き起こす病気で、国の難病にも指定されています。潰瘍性大腸炎は主に大腸に炎症が生じ、クローン病は口から肛門までの消化管全域にわたって炎症が及ぶ可能性があるのが特徴です。
どちらの疾患も原因は明らかになっていませんが、適切な治療を継続することで良好な状態を保つことが可能です。また、一時的に症状が治まっても再発しやすいため、症状がない時期にも継続した治療が必要です。
なお、潰瘍性大腸炎とクローン病は似た症状を示すことが多いものの、治療法が異なります。
例えば、クローン病では食事療法や栄養管理が重要となるケースが多いため、専門医による正確な診断と治療が不可欠です。
大腸ポリープは将来的にがん化する可能性がある病変であり、大腸がんの早期段階でも自覚症状がほとんどないことが少なくありません。日頃から下痢を起こしやすい方へ
下痢は、暴飲暴食、香辛料の過剰摂取、身体の冷えなど日常的な要因でも生じます。また、自律神経の乱れにより腸の動きが過敏になることでも下痢が起こります。
- 過剰な飲食や刺激物を控えること
- 身体を冷やさないようにすること
- ストレスを溜め込まず、適切に発散すること
- 喫煙を控える（ニコチンは腸の蠕動運動を促進しやすく、下痢の原因となります）
これらに気をつけることで、生活習慣による下痢は予防できる場合が多いです。ただし、明らかな原因があったとしても、慢性的に下痢が続く場合には治療が必要な病気が隠れている可能性があります。
「体質だから」と見過ごさず、症状が長引くときは一度当院までご相談ください。