便秘について
「強くいきまないと出ない」「何日も排便がない」「排便してもすっきりしない」といった状態が継続するのが便秘です。これが慢性的に続き、日常生活に支障をきたすようになると「慢性便秘症」と診断されます。
便秘は、食生活の乱れや運動不足、加齢などによっても起こりますが、実は何らかの疾患が隠れていることもあります。また、便秘が長引くことで大腸などに新たな病気を引き起こす場合もあります。
「いつもの便秘だから」と自己判断して市販薬で対応してしまわず、一度は消化器内科など専門の医師に相談することをお勧めします。
便秘の種類と分類
日本消化器病学会が発表している「便通異常症診療ガイドライン2023」によると、便秘とは「本来体外に排出されるべき便が、十分かつ快適に出せない状態」と定義されています。さらにこの状態が続き、生活に支障が出ている場合は慢性便秘症に分類されます。
便秘は女性に多い傾向がありますが、加齢によって消化管の機能が低下することも関係し、年齢とともに男女問わず発症率が高まります。
原因によって便秘は大きく以下の4つに分類されます。
機能性便秘
蠕動運動(腸の動き)や知覚の異常など、腸の動きに関わる機能の低下によって引き起こされる便秘です。腸と脳は自律神経を介して密接に連携しており、ストレスや生活リズムの乱れなどが腸の機能に影響を与えることも多くあります。
器質性便秘
大腸がんや腸閉塞、炎症など、消化管そのものに疾患がある場合に起こる便秘を「器質性便秘」と呼びます。女性の場合には、骨盤底筋の緩みにより直腸が膣側へ押し出されてしまう直腸瘤なども便秘の原因になります。原因疾患の特定と早期治療が必要です。
症候性便秘
糖尿病、パーキンソン病、強皮症などの全身疾患や、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患によって引き起こされる便秘です。
薬剤性便秘
抗コリン薬、抗うつ薬、頻尿治療薬、パーキンソン病治療薬などを服用することによって腸の働きが抑制され、便秘を引き起こす場合があります。こうした便秘を「薬剤性便秘」と呼びます。
便秘の原因となる主な消化器疾患
便秘は一般的な症状ですが、過敏性腸症候群、腸閉塞、大腸がんなど、様々な消化器疾患が原因で起こることがあります。また、クローン病や潰瘍性大腸炎などでは通常は下痢が主な症状とされていますが、一部では便秘を呈するケースもみられます。
特に注意が必要なのは大腸がんです。下行結腸からS状結腸にかけてがんが発生した場合、腸が狭くなり早期段階でも便秘が現れることがあります。
それまで便通に問題がなかった方が、急に便秘傾向になった場合は、重大な病気が隠れている可能性もありますので、なるべく早めに専門医を受診してください。
便秘が続くことで、腸内に便が溜まり、腸の働きに悪影響を与えることがあります。繰り返す便秘や長引く便秘がある場合は、消化器内科で相談されることをお勧めします。
便秘の検査・治療方法
便秘の診療では、患者様の排便習慣や生活習慣を把握することがとても重要です。そのため、診察では排便の頻度や便の性状、過去の病歴、服薬状況などについて丁寧に問診を行います。
「便の話だから」と遠慮せず、できるだけ詳しくお話し頂くことが、正確な診断に繋がります。
検査では、感染や内分泌機能の異常がないかを確認するために血液検査を行い、必要に応じて腹部超音波検査や大腸カメラ検査などを追加して実施します。
なかでも大腸カメラ検査は、便秘の原因として最も多い大腸の異常を詳細に観察できる検査として非常に有用です。
疑わしい部位が見つかった場合は、その場で組織を採取して病理検査を行い、確定診断へと繋げることができます。
これらの診察・検査結果をもとに、機能性便秘なのか、器質性疾患によるものなのかを正確に判断し、それぞれに適した治療を行います。
便秘が続く場合は早めに当院までご相談ください
便秘は「少し我慢すればそのうち良くなる」と考えがちですが、長引くことで徐々に悪化し、日常生活にも支障が出てくることがあります。
また、腸に便が長時間留まることで、腸内環境が悪化し、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、背景に大腸がんなどの疾患が潜んでいる「器質性便秘」のケースでは、早期発見が病状の進行を防ぐ鍵となります。そのため、「最近便秘がちで気になる」「市販薬を飲んでも改善しない」といった方は、早めに当院までご相談ください。

