- 大腸ポリープについて
- 大腸ポリープや大腸がんの原因
- 自覚症状が現れにくい大腸ポリープと大腸がん
- 大腸カメラは診断と治療を同時に実現できる唯一の検査
- 大腸がんを防ぐための2つのアプローチ
- 日帰り手術によるポリープ切除の安全性とメリット
- 大腸ポリープ切除の重要性と当院で実施している手法
- 切除後2週間の過ごし方と注意点
大腸ポリープとは、大腸の内側を覆う粘膜の一部が隆起したり、場合によってはへこんだりして形成される腫瘍です。形状や性質は様々ですが、その多くは「大腸腺腫」と呼ばれる良性の腫瘍であり、発見された段階で内視鏡により切除することが可能です。
ただし、この良性の大腸腺腫も、長期間放置したり、大きさが増して形が不整になってくると、がん化するリスクが高まります。実際に進行した大腸がんの多くは、元をたどるとこの大腸腺腫から発生していると考えられています。
とはいえ、大腸腺腫ががん化したとしても、すぐに深刻な状態に進むわけではありません。
初期の段階である「早期大腸がん」のうちは、良性腫瘍と同様に内視鏡による切除が可能です。
特にサイズが小さいものであれば、体への負担が少ない内視鏡手術で完治が期待できます。
つまり、大腸ポリープの中でも、良性の大腸腺腫や早期大腸がんの一部は、内視鏡によって切除し、がんの進行を未然に防ぐことができる重要な治療対象となります。
大腸ポリープや大腸がんの原因
大腸ポリープの明確な原因はまだ解明されていませんが、一般的には40歳を過ぎると発生しやすくなるとされています。同様に、大腸がんの発症原因も1つに特定されているわけではなく、食生活の欧米化をはじめとする生活習慣の変化、遺伝的要因、環境因子など、複数の要素が重なり合って発症に至ると考えられています。
多くの大腸がんは、良性の大腸ポリープが長期間放置され、がん化することで発生します。
なお、ごく稀なケースとして、「家族性大腸腺腫症」という遺伝性疾患があります。これは、10代の若い年代から大腸に多数のポリープが形成され、年齢とともに増加し、最終的には100個以上のポリープが大腸全体に発生する疾患です。
50%の確率で遺伝するとされており、当院ではこの病気が疑われる場合には、遺伝性腫瘍を専門とする医療機関をご紹介しています。
大腸がんのリスクが高い方は、
- 40歳以上である
- 大腸ポリープを指摘されたことがある
- 家族に大腸がんや大腸ポリープの既往がある
- 糖尿病を患っている
- 喫煙の習慣がある
- 肥満または運動習慣がない場合
などが該当します。
特に40歳を超えると、大腸ポリープや大腸がんが発生しやすくなるため、がんの早期発見・早期治療のためにも、定期的に大腸カメラ検査を受けましょう。また、糖尿病のある方も、大腸がんの発症リスクが高まることが知られており、糖尿病の治療だけでなく、消化器の定期的なチェックも大切です。ご家族に大腸がんやポリープの診断歴がある場合は、ご自身の腸の状態を把握するためにも、早めの検査をお勧めします。
自覚症状が現れにくい大腸ポリープと大腸がん
大腸ポリープや早期の大腸がんは、多くの場合、自覚症状がほとんどありません。稀に、肛門近くにポリープができた場合には、血便や粘液の混ざった便などの症状が見られることもあります。
しかし、これまでの内視鏡診療の経験からも、大腸ポリープや初期の大腸がんは無症状のうちに発見されるケースが非常に多く、「症状がないから大丈夫」と考えるのは大変危険です。
リスク因子に該当する方は特に、自覚症状の有無にかかわらず、定期的な大腸カメラ検査を受けることをお勧めいたします。
大腸カメラは診断と治療を同時に実現できる唯一の検査
大腸カメラは、大腸の粘膜表面に現れる微細な変化を直接観察できる唯一の検査法です。これにより、大腸ポリープを早期に発見することが可能となります。
当院では、専門医が高度な内視鏡技術を駆使し、目視では見落とされやすい小さな病変も見逃さずに診断できます。
ポリープが確認された場合は、検査中にそのまま切除を行う「日帰り手術」に対応しており、通院や入院の手間を最小限に抑えながら、迅速な治療へと繋げます。
大腸ポリープの多くは「腺腫」と呼ばれる良性の病変で、進行する前に切除することで大腸がんへの進行を防ぐことができます。
また、既にがん化が始まっていたとしても、早期の段階であれば内視鏡手術のみで治療可能なケースが少なくありません。ただし、がんが進行しリンパ節などに転移した場合には、外科手術や抗がん剤治療といった、より大掛かりな医療介入が必要になることもあります。
大腸がんを防ぐための2つのアプローチ
大腸がんの予防には、「一次予防」と「二次予防」という2つの重要な観点があります。
| 1次予防 | 生活習慣を見直して発症リスクを抑える |
|---|---|
| 2次予防 | 早期に発見して症状が出る前に治療する |
一次予防とは、生活習慣を見直して、がんの発症リスクを根本から減らす取り組みです。なかでも禁煙は最も効果的な対策とされています。加えて以下のような健康的な生活習慣を継続することが推奨されます。
- 野菜を中心としたバランスの良い食事を、1日3食きちんと摂る
- 食べ過ぎや偏食を避け、規則正しい生活リズムを保つ
- 適度な運動を日常に取り入れて、肥満を防止する
これらの積み重ねが、大腸がんの予防に繋がります。
一方、二次予防とは、定期的な検診や内視鏡検査を通じて、大腸がんや前がん病変(大腸ポリープ)を早期に見つけ、症状が出る前に治療を行うことです。特に大腸がんは、初期には自覚症状がほとんどないため、早期発見を逃すと進行してから気づくことも少なくありません。
例えば、便潜血検査(検便)で陽性となった場合や、お腹の不調を感じている場合には、迷わず大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。大腸がんやポリープが発見されたとしても、早期の段階であれば、治療の負担も小さく済み、十分に完治を目指すことが可能です。
日帰り手術によるポリープ切除の安全性とメリット
大腸ポリープの切除は、内視鏡を用いた低侵襲な処置で行われ、治療中に痛みはほとんどなく、術後の後遺症も心配ありません。多くのポリープは小さく、比較的シンプルな手技で切除が可能です。
やや大きめのポリープであっても、近年の技術進歩により合併症のリスクは大幅に軽減されており、万が一何らかのトラブルが起きたとしても、適切な処置を迅速に施すことで安全性は確保されています。
日帰り手術の最大のメリットは、入院の必要がないことです。これにより時間的な拘束が減り、入院費用の負担もかからないため、患者様の経済的・心理的な負担が軽減されます。
大腸ポリープ切除の重要性と当院で実施している手法
大腸ポリープは、そのまま放置しておくと将来的にがんへと進行するリスクがあるため、早期の段階で切除することが大切です。ポリープは小さいうちに切除しておくことで、出血などの術後合併症を避けやすくなります。
当院では、大腸カメラ検査中にポリープを確認した場合、基本的にはその場で切除を行っています。
ポリープが多数ある場合は、患者様の体調を考慮して、複数回に分けて治療することもあります。
また、形状やサイズによって日帰りでの対応が難しいと判断されるケースでは、提携している高度医療機関をご紹介し、適切な治療に繋げています。
それぞれのポリープに最適な方法を選択し、安全性と効果の高い切除を行っています。
以下は、当院で行っている大腸ポリープの切除法です。
ポリペクトミー
茎のあるポリープに対して行う標準的な手技です。金属製のスネア(輪状の器具)でポリープの根元を囲み、高周波電流を流して切除します。切除時に出血が見られた場合でも、止血用クリップによって迅速に対応可能です。
コールドポリペクトミー(CSP)
小さなポリープに適応される方法で、スネアを使ってポリープを切除する点はポリペクトミーと同様ですが、高周波電流を用いないため、熱による組織損傷がなく、出血や穿孔のリスクが極めて低い安全性の高い手技です。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
サイズがやや大きい、あるいは平坦な形状をしたポリープに用いる方法です。ポリープの下に生理食塩水を注入して、粘膜を盛り上げたうえで、スネアで根元を囲み、高周波電流により切除します。
全周切開内視鏡的粘膜切除術
EMRよりもさらに大きく、広がった形状のポリープに対して行います。通常のEMRに加え、ポリープ周囲を先に全周切開してから、スネアで根元を囲んで切除します。この工程は、まるでペンで輪郭をなぞるような丁寧な下準備であり、スネアのかかりにくさを解消し、確実かつ安全な切除を実現する工夫です。
切除後2週間の過ごし方と注意点
ポリープ切除後の傷口は、およそ2週間で自然に塞がり、瘢痕化を経て回復していきます。この期間中も、日常生活やお仕事は普段通りお過ごし頂けますが、合併症を防ぐためにはいくつかの注意が必要です。
まず、飲酒や暴飲暴食は避け、胃腸に負担をかけない食生活を心がけましょう。また、重い物の持ち上げや強くいきむ排便といった腹圧がかかる動作も控えてください。旅行や長時間の移動を伴う出張も、念のため1週間程度は控えるようお願いいたします。
稀に穿孔や術後出血などの合併症が起こる可能性があるため、万が一、大量の下血や腹痛などの異変があれば、速やかに当院までご連絡ください。すぐに対応いたしますので、ご安心ください。
ご自宅での注意事項
睡眠
術後は十分な休息が大切です。当日はしっかりと睡眠を取り、身体を休めてください。
入浴
当日はシャワー浴に留め、湯船には浸からないでください。翌日以降は入浴が可能ですが、長湯は避けてください。
食事
術後当日は、脂っこいものや香辛料などの刺激物は控え、消化の良い食事を心がけましょう。
飲酒
切除から1週間は、アルコールの摂取を控えてください。出血などのリスクが高まる可能性があります。
運動
激しい運動や腹筋に力が入るような動作は、術後1週間は避けましょう。軽い散歩や日常の買い物程度であれば問題ありません。
旅行・出張
術後1週間は、長時間の移動や遠方への外出は控えてください。
体への負担だけでなく、万が一の際にすぐに対応できなくなる恐れがあります。

