慢性胃炎について
慢性胃炎とは、ピロリ菌への感染により、胃の粘膜に長期間にわたって炎症が続く状態を指します。この炎症が進行すると、胃粘膜が徐々に薄くなり、本来の機能が低下してしまいます。こうした状態は「萎縮性胃炎」とも呼ばれています。
自覚症状には個人差があり、まったく症状を感じない方もいれば、胃の不快感を訴える方もいます。
ピロリ菌に感染したままの状態(現感染)が続くと、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のリスクが高まるだけでなく、胃がんの発症リスクも上昇すると言われています。また、過去にピロリ菌に感染していた方(既感染者)であっても、リスクが完全になくなるわけではありません。
つまり、慢性胃炎(特に萎縮性胃炎)は、胃がんの重要なリスク因子であり、早期発見・早期対応が求められる疾患です。
慢性胃炎の主な症状
慢性胃炎では、以下のような症状が見られることがあります。
- みぞおち(心窩部)の痛み
- 吐き気
- 胃の不快感・膨満感・違和感
ただし、これらの症状は慢性胃炎に特有なものではなく、胃潰瘍や胃がんなど他の疾患でも同様に現れる可能性があります。そのため、正確な診断には胃カメラ検査が不可欠です。
特に胃がんは、進行しても自覚症状が乏しい場合も多く、早期発見が命を守る鍵となります。少しでも気になる症状がある場合は、早めに当院までご相談ください。
慢性胃炎を引き起こす原因
慢性胃炎の多くは、幼少期にピロリ菌に感染することから始まります。感染した菌が長期にわたり胃内に留まることで、慢性的な炎症が生じ、やがて粘膜が萎縮していきます。
炎症はまず胃の出口にあたる「前庭部」から始まり、次第に胃の中央部(胃体部)へと広がっていきます。この経過を経て、胃の粘膜は萎縮し、機能が低下していきます。
ピロリ菌感染は、東アジア地域(日本を含む)で特に多いことが知られており、特に中高年層では感染者が高い割合を占めています。最近では若年層の感染率は減少傾向にあるものの、親から子への経口感染などを通じて、現在でも一定数の感染が確認されています。
なお、ピロリ菌の感染経路には未解明な部分も多く、今後の研究が待たれています。
慢性胃炎の検査・診断方法
慢性胃炎が疑われる場合、まずは胃カメラ検査を行い、胃の粘膜の状態を詳しく観察します。慢性胃炎と診断された際には、ピロリ菌への感染の有無を確認する検査を行います。
胃薬を服用していなければ、胃カメラ中にそのまま迅速ウレアーゼ法によるピロリ菌検査が可能です。また、当日中に確認したい場合は、尿素呼気試験(UBT)も実施できます。
当院では、院内に尿素呼気試験専用の検査機器を導入しており、検査後わずか2分で結果が分かります。そのため、何度もお越し頂く必要はありません。
ピロリ菌の検査結果が陽性であれば、除菌治療を開始します。一方、既に自然に除菌されていて現在ピロリ菌が存在しない場合には治療の必要はありませんが、除菌後であっても慢性胃炎が残っている場合は胃がんのリスクが継続します。
そのため、除菌の有無にかかわらず、年1回の胃カメラ検査を継続することが重要です。
また、保険診療以外の選択肢として、その年度に41歳となる方を対象にした「胃がんリスク検診(ABC検診)」もご利用頂けます。これは採血によってピロリ菌の有無と胃粘膜の萎縮度を評価する検査で、検診で「要精査」とされた方は、当院にて胃カメラ検査および除菌治療を行っています。
慢性胃炎の治療方法
慢性胃炎の治療において最も重要なのは、ピロリ菌の除菌です。
除菌治療が完了した後も、また自然除菌で現在菌が存在していない場合でも、慢性胃炎が残っている限り胃がんの発生リスクは完全にはなくなりません。
除菌によって発がん率をある程度低下させることは可能ですが、胃がんの「母地」となる粘膜の変化は完全には消えないため、継続的なフォローが必要です。
胃がんは長い年月をかけてゆっくりと進行し、自覚症状が現れにくいのが特徴です。
しかし、年に1回の胃カメラ検査を続けていれば、万が一胃がんが発生しても早期の段階で発見し、治療へと繋げることができます。
また、定期検査によって「胃がんがない」という安心感を得ることにも繋がります。
当院では、ピロリ菌の感染検査から除菌治療、定期的な胃カメラ検査まで一貫して対応しています。
ご不安な点がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

